米国疾病対策予防センター(CDC)(※1)は2016年2月「CDC公衆衛生 病例検討会 慢性疲労症候群:研究推進と臨床教育」を開催し、4つのプレゼンテーションが行われました。

チャールズW.ラップ医師は慢性疲労症候群の臨床症状について講演しました。以下はその時のスライドの主な内容です。

臨床例
臨床例ではCFSの全ての重要な特徴を示している
労作不耐(軽い活動にも耐えられない)と衰弱性の疲労
労作後の再発と倦怠感
睡眠障害の新たな発症
認知の困難
起立不耐症(起立時のめまいや立ちくらみ)
症状の悪化と軽減の繰り返し
全身のインフルエンザ様筋肉痛、関節痛、または広範囲の体の痛み


誘発因子と病歴
症状は数時間から数日かけて急性発症する
患者の最大85%は発症のきっかけを報告
 ●細菌またはウイルス感染(72%)
 ●外傷(4.5%)
 ●手術や出産(4.5%)
 ●アレルギー反応(2.2%)
 ●ストレス、感情的なトラウマ(1.7%)
病気の自然経過は悪化と軽減の繰り返し
予測不能な発症および再発時の重症化
成人患者のほとんどは身体機能が発症前レベルに戻らない


併存疾患
線維筋痛症
過敏性腸症候群(IBS)や過敏性膀胱(~85%)
シェーグレン症候群(~85%)
関節可動亢進(エーラスダンロス症候群)(12%~60%)
化学物質過敏(~67%)、光・音・温度・接触過敏
嚥下障害、早期の満腹感、吐き気や便秘を伴う腸運動性障害(58%)
小麦、穀類、グルテン過敏を伴うセリアック病様障害
腹腔骨盤痛
血管運動性(自律神経系or非アレルギー性)鼻炎
その他多くの症状・・・


診断
米国医学研究所(IOM)(※2)は積極的な診断を推奨している
推奨される診断基準
 ●SEID(全身性労作不耐疾患)の診断基準
 ●1994年に定義された診断基準
 ●カナダで合意された診断基準
早期診断は病気の不確実性や不安、医療費の面で患者の救済につながる
 多くのCFS患者が相当な医療費の自己負担に直面している
(※2)米国医学研究所(Institute of Medicine: IOM):研究会開催や報告書発行等を通じ、健康や医療に関して議会や政府に助言する独立非営利の学術機関。


予後
成人患者
 40%以上は症状改善しうる
 全快の中央値は5%未満である
小児・青年期患者
 60~88%は時間とともに改善する


薬物療法と非薬物療法
薬物療法
 ●睡眠と疼痛の管理
  できれば麻薬作用のある鎮痛剤は避ける
 ●症状と併存疾患の管理
非薬物療法
 ●物理療法
  エプソムソルト入浴、ホットパックもしくはコールドパック、湿布薬、マッサージ、整骨治療、鍼灸治療


活動の維持、ただし活動し過ぎない
ストレッチから始め、可動域を広げる
次にシンプルな筋トレを行う(軽量ウェイト、ゴムバンド)
特定の有酸素運動を行う
 太極拳、ヨガ、ウォーキング、サイクリング、プール療法
症状の再発を避けるため、活動を時間で制限する(1日5分からはじめる)あるいは活動の反復回数を制限することを勧める
患者が過度の疲労を感じた場合は活動時間や反復回数を減らす
(注)講演内では「非常に軽度の活動から開始し、ゆっくりと進めていくこと。短期の活動の後には十分な休息を取るようにし、症状の再燃や労作後倦怠感を起こさないように。」との説明があった。


臨床例のまとめ
小児も成人も発症しうる。
一般的に先行する医学的事象があり、その多くは感染症である。
患者は早期の総合評価と診断により恩恵を受ける。
疾患は生活の質に深刻な影響を及ぼしうる。しかし改善、回復する可能性はある。
根治療法はない。しかし段階的運動療法やある種の薬物療法は有益になりうる。


(※1)米国疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC):米国保健社会福祉省(Department of Health and Human Services: DHHS)の下部機関。疾病の予防と管理に関する活動、環境衛生に関する活動、健康増進および教育活動など、米国民の健康増進を目的とした各種活動の開発と実施における中心的存在。


【参考】
(CDCの原文)http://www.cdc.gov/cdcgrandrounds/pdf/archives/2016/feb2016.pdf
(CDCの動画)https://www.youtube.com/watch?v=0SnJy5AOSd8